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生理用品と処置法の移り変わり

明治時代の処置法から現在の生理用品の基礎となった
アンネナプキンまで

生理用品と処置法の移り変わりのあらまし

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―明治時代から昭和のアンネナプキンまでの生理用品と処置法の移り変わり

発端は明治時代


日本で主に行われているナプキンによる月経処置方法が提唱され始めたのは明治時代です。
医師が月経帯と脱脂綿による処置方法を、上流階級の限られた女性たちに向けて
説いたことがもとになっています。

月経帯とは、生理用の下着のことでサニタリーショーツにあたります。
ナプキンの役割をする経血を吸収させるために使うものは脱脂綿で、
この両方をセットで使うことが適切な処置方法とされました。

月経帯が登場する以前の江戸時代では、古い布や何度も再生した
粗末な紙などをあて、丁字帯(ていじたい)という
長方形の布の片方に、腰に巻くためのひもを
丁字の形に縫い付けたふんどしのようなもので押さえたり、
丁字帯を使わずに詰めものをして処置をしていました。

タンポン式の詰める処置方法は、月経帯や丁字帯がなくても
可能で手軽な方法ですが、詰めものをすると体に害を及ぼす
と言う理由から脱脂綿と月経帯の併用を推奨し、
タンポン式はしてはいけない処置法だという医師もいました。


国産薄ゴムによる月経帯が発売された大正時代


明治時代の終わり頃に販売されていた月経帯は、
ヨーロッパに渡航した人たちが現地でみた月経帯を参考に改良を加えたものや
輸入品などで、股の部分には薄いゴムが使われていました。

大正時代に入ると、それまで輸入していた月経帯の材料の薄ゴムが国内で製造されるようになり、
ビクトリヤという月経帯が登場しました。

誰でもが購入できる値段ではありませんでしたが、
月経帯の価格はそれまでの輸入品の約半分になりました。

ビクトリヤ月経帯の発売後から昭和初期にかけて、
ローヤルバンド、エンゼルバンド、メトロンバンド、
フレンドバンドなど新製品が次々と現れました。

機能性向上と細分化が進んだ昭和初期


昭和の初め頃には月経帯のデザインも変化しズロース型の月経帯が登場しました。

ズロースとは、太もも辺りまであるゆったりとした
半ズボンのような下着です。

ズロースは大正時代の半ば頃から女学校の制服の
洋装化が進んだことに伴って、洋装時の下着として着用されていました。

月経帯を製造する会社も増え、脱脂綿を押さえるためだけの
月経帯ではなく機能を持たせたものもありました。

保温のために腹部を布で広くおおったものや、
ゴムを二重にしたりギャザーを寄せたりして、
衣類への染みや脱脂綿の脱落を防ぐ工夫を施し、
ユーザーのニーズに応じて女学生用、職業婦人用、運動用など
商品の細分化も進みました。

節約と代用品の戦時下


1940年代に入ると戦争による物資不足の影響で、
生活必需品は配給制になり月経処置用の脱脂綿も例外ではありませんでした。
節約や代用が求められ、脱脂綿の代用品プリシラ模造綿の発売もこの頃です。

好ましくないとされていたタンポン式処置の
利便性を強調した、さんぽんも発売されました。

タンポン式処置法は脱脂綿の節約につながり、
戦地へ赴いている男性に代わって仕事に就いたり、
銃後の訓練をするときにも行動しやすい
というメリットを強調していました。

1945年『主婦之友』新年号では、脱脂綿の配給が少なく処置に困る場合のアドバイスとして、
新聞紙を用いた処置法を戦時生活の工夫として伝えています。

昭和36年 アンネナプキンとパンネット登場


1945年8月の終戦後、すぐに物資の不足が解消されたわけではなく、
脱脂綿の配給は1951年まで続きました。

戦後の服装の変化に合わせて月経帯の形状は、
からだに密着するショーツ・パンティ型のデザインに移行していきます。

そして1961年、使い捨てナプキンの礎となった、
アンネナプキンと月経帯のパンネットが
アンネ株式会社から同時に発売されました。

アンネナプキンは脱脂綿ではなくトイレに流せる特殊な紙綿で、
パンネットは網(ネット)状のサニタリーショーツです。

アンネナプキンとパンネットの発売以降、
大正期から昭和初期にかけて新しい月経帯の登場が続いたように、
生理用品を手掛ける企業が増え品質の向上は加速し現在に至っています。




関連ページ



各商品名/広告掲載誌
※1 安全帯/1912(明治45)年『婦人世界』第7巻第2号
※2 ビクトリヤ月経帯/1916(大正5)年『婦人画報』3月巻
※3 シーズンバンド/1936(昭和11)年『主婦之友』7月号
※4 さんぽん/1941(昭和16)年『主婦之友』12月号
※5 アンネ/1961(昭和36)年『主婦の友』12月号

最終更新日:2015年11月25日

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