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ビクトリヤとアンネの功績

ビクトリヤ月経帯の知名度について

ビクトリヤ月経帯の宣伝方法と広告資料集

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―小説に登場するビクトリヤの知名度

ビクトリヤ月経帯の知名度


ビクトリヤ月経帯は、大和ゴム製作所が製造から販売までを
一貫して行い、宣伝に力を入れたこともあり、
大正時代から昭和初期にかけてネーミングの通り月経帯の女王でした。※1

芥川龍之介の『悠々荘』に、林真理子の『白蓮れんれん』、
これらの1920年代を舞台にした小説に登場するビクトリヤ月経帯は、
裕福さを感じさせる小道具のように使われています。

1937(昭和12)年2月、古川ロッパは、靴のまま楽屋に上がり込み
英語を交えて話すビクトリア女王の研究をしているという客が気に入らず、
ビクトリヤ月経帯を引き合いに出してからかったと日記に残しています。


ビクトリヤ月経帯のパッケージ缶

商店では、ビクトリヤ月経帯の人気に乗じて悪質な売り方をするところもありました。
ビクトリヤを買いに来た客に対し、店にとって利益の大きい別の月経帯や偽物を売りつけ
文句を言うと店側は、ビクトリアとは月経帯のことだと開き直ることもあったそうです。

この対策のためビクトリヤ月経帯の広告には、
「必ずビクトリヤと御指名下さい」「ビクトリヤの文字をお確かめ下さい」
という注意書きが添えられるようになりました。

ビクトリヤの現象を復活させたアンネ


アンネはビクトリヤの復活である。
私は古い雑誌の生理用品の広告をみているうちにこのような考えを持つようになりました。

その理由の一つは、
大和ゴム製作所のビクトリヤ月経帯の登場が契機となって、
ゴム製品製造会社が月経帯を手掛けるようになり新たな製品の発売が続いたことです。※2

現在では月経帯はショーツと兼ねることができるため、
生理用品の必須アイテムではありません。※3
しかし、ビクトリヤが登場した1914年頃は、ナプキンの役割をする脱脂綿を抑えることと、
衣服を汚さないための防水機能を併せ持った薄ゴムが使われている月経帯は、
誰でもが入手できたとは言えないまでもその価値は認められていたことでしょう。

もう一つの理由は、
アンネは見事な広告宣伝活動によって、月経に対するネガティブなイメージを払拭しましたが、
ビクトリヤをはじめ当時の生理用品の広告もまた、
まるで月経タブーなど存在しないかのように明るく堂々と宣伝しています。


ビクトリヤ:1920(大正9)年『婦人世界』第15巻第9号より
アンネ:1962(昭和37)年『女性自身』5月21日号より

アンネナプキンとアンネ株式会社が、生理用品の発展や女性の生活に
大きく貢献したことは多くの書籍によって伝えられています。
その登場によって生理用品への理解が進み、どこでも誰でもが入手できるまでになりました。

一方、ビクトリヤの大和真太郎氏と大和ゴム製作所が残した生理用品への功績が
アンネほど伝えられていないのは、同社は生理用品のための創業ではなく
薄ゴムや防水布、ゴム製品製造のための事業だったからと言えましょう。※4

1910年代にビクトリヤが先陣を切った新しい生理用品登場の流れは、
1930年代の終わり頃から1940年代で事情が変わってしまいますが、
1961年のアンネによる月経帯とナプキンの同時発売以降、
生理用品は生活に欠かせないものとして認知され現在に至っていることをみると、
やはりアンネはビクトリヤの復活であると考えられるのです。



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※1 大和氏の対談記事によれば、1924(大正13)年のビクトリヤの販売個数は
120万個で大正10年頃まではほぼ独占状態であったという。

※2 大和ゴム製作所のビクトリヤ月経帯発売以降、第一ゴム製造所がフレンドバンド、
渋谷ゴム製作所がスイタニヤ、東京ラバー工業所がアートバンドを発売した。
ビクトリヤとの前後関係は不明だが、ハナキゴムも月の友月経帯を製造していた。

※3 ワコールのアンケート(2010年)によると、サニタリーショーツ使用率は77パーセントである。
生理専用ショーツが必須アイテムでなくなったのは、ショーツのフィット性が増したことと、
ナプキンの性能(漏れない吸収力と固定できる粘着力)が向上したためであろう。

※4 薄ゴム製造とその機械化に成功した大和真太郎氏(大和ゴム製作所創業者)は、
「ゴム引き布、薄もののパイオニア」と言われゴム業界に貢献した。
他に同業界人が大和氏を語る言葉には「立志伝中の人」「研究心の強い人」
「たくましい事業熱」「高潔なる人格」とある。

最終更新日:2015年11月25日

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